未経験者が情報誌のライターを複業としてすることは可能なのでしょうか?

いつもどう答えればいいのか、迷ってしまう質問があります。

「情報誌のライターをしたいのですが」

ふと、今日こちらに近しい質問をいただき、マジレスしてしまったので、
ちょっと内容を整理してまとめておきたいと思います。

あかね
かくいう私は、2003年に新卒で情報誌の出版社に就職。今は編集プロダクションの経営をしていて、定期的に情報誌を刊行する名古屋の出版社5社のうち3社での編集経験者です(外部スタッフとしてを含む)。

実際、そんな想いで夫に連絡をくれた友達もいて、うちにも複業でバイトに来てくれていたりします。

私ごときの零細編集プロダクションの人が偉そうなこと言ってたらすみません!
お花畑ではない、現場の超リアルな話です。
なにかの参考になればと思います。

あかね
ちな、情報誌のなかでカロリーの高い企画と、カロリーの高い企業情報誌を毎月兼任するという恐ろしい日々を過ごしています。総カロリーでは負けない自信あり。笑

あと、これは名古屋の話です。東京はまた違うと思います。

結論:おすすめしません。将来性のわりに、参入障壁が無駄に高いです。

夢をこわしてすみません。
悪いことは言いません、未経験からサクっと始めるなら、断然Webのほうがいいです!!!

一から覚えるつもりでどこかで修業して全力でやるか、死ぬほど文章が上手いか(確率0.1%)でないと、そこまで稼げないし、良い仕事ももらえないからです。

参入障壁が無駄に高いんです。将来性やギャラのわりに。

あかね
ちなみに、これは意地悪でいっているのではありません。もし本当に情報誌をガツガツしたい人がいたら、どうぞどうぞ、私の仕事を奪って下さいと思っているクチです。むしろ、「うちを手伝って!」とも思ってます。

理由1:工程がとにかく多い。ライターといえど、書く労力は全体の半分以下。

ライターといえども、情報誌では「書くだけ」という仕事はあまりありません。
(一応、そういう仕事もありますが、安いし、細かいし、楽しくないと思います)

まずは、取材アポを入れます。撮影カットをお店の人に伝えます。
どんな準備をしてもらえばいいかなど、説明します。

取材に行くとすると、ライターが現場のディレクションをさせられることもほとんど。
カメラマンさんへのお願いや写真のチェックなども必要になってきます。
まれに、編集者が同行してくれる仕事もありますが、それは広告関係のときがほとんど。
基本的に、こだわりたいときか、重要なときしか同行してくれません。
(なぜなら、編集者が全取材に同行してしまうと、他の編集作業が進まず、進行が滞ってしまうからです)

そして、原稿。媒体によっては、写真のセレクトも課せられるかも。

原稿を書いてからは、店へのチェックや、細かい調整があります。
最後の確認作業が、正直、原稿を書くより辛いです。

あと、情報誌の制作はスパンが短いことも多いので、平日全稼働が基本です。
「明日までに店に聞いておいて」とかそういうオーダーも多いからです。
例えば飲食店ならアイドルタイムしか電話ができないので、日中オフィスワークをしている人はもう対応できなくなってしまいます。
「毎週月曜しか働けません」などという人は、なかなかお願いしにくいかも。
お願いできたとしても、本当に一部だけを担う、バイト的な扱いになると思います。
ライター冥利に尽きる仕事は、あんまりできないかもです。

あかね
たいして整理もせず、大変さを述べました。すみません

理由2:業界の暗黙のルールのもと、仕事が進められる。

「これは知っとけ」ルールがたくさんあるんですよね。

カンのいい人は1冊くらいがっつり関われば覚えると思います。
ただし、がっつり関わること。フルタイムで3ヶ月。
うちの夫は未経験から、この業界に来て、ある編集プロダクションで1冊に関わって、だいたいの工程を覚えたらしいです。
けっこう大変だったみたい。

ほら、この業界、だいたい誰も教えてくれないから。放置がデフォルト。

「知ってる」ことを前提にすべての仕事が進むし、
どこかの社員にならない限り、その基本を一から教えてもらえないので
結局は、発注のとき経験者かどうかが重要になるんですよね。

(ちなみに、ガチで稼ぎたいなら、デザインやDTP、印刷とかについても程度知っていたほうがよいかも)

あかね
そもそも業界の風土的にちゃんと教える人が少ない。ちゃんと教えようとすると、厳しいことも言われてしまうかも。そして、なにより自分の仕事でいっぱいいっぱいなの!教えるためにバッファーをとれるほど、時間に余裕のある仕事じゃないなあ。

理由3:取材でも資料を見ての制作でも、情報を切り取る力、集める力は鍛えないと身につかない。

ライターの力って、表現力や語彙力じゃなくて、「何を伝えるか」だと思うんです。
そのためには、たくさんの情報を集めないといけない。
取材でも、資料を調べて書く仕事でも、「この人、情報の集め方が不足しているな」というのは短い記事でもわかってしまいます。
そして、たくさん集めた情報のなかから、情報誌映えするものをセレクトして、書かないといけません。

どんな情報が求められるのか、数字なのか、雰囲気なのか、感想なのか・・・

それは媒体によって違うので、それを察する力も必要になります。

あかね
地頭の良さが試される・・・・・・・・!こわいこわい

理由4:限られた文字数のなかで、必要な情報をしっかり伝えるための技術がモノを言う。

情報誌の文章は、よほど読ませる系ではない限り、80~300wくらいでしょうか。
そのなかに、「これでもか!」というくらいに情報を詰め込むんですよ。
「この限られた文字数内で情報を詰め込む気概」というのが必要でして。
だから、Webを主軸にされている方の文章って、正直情報誌に向かないことが多いです。
とはいっても、慣れてしまえば、フォーマットに当てはめたような文章にはなるのですが、
それを全員が書けるかというと、そうでもないと思っています。

それが書けるからって、=文章が上手いというわけではないだろうし、要は慣れの問題です。

あかね
情報誌にある、情緒もへったくれもない80文字の文章、あれをちゃんと書けない人、山ほどいるからね。逆もしかり!(←私)

理由5:というのを、すべて一から学んでまで、この仕事したい?ギャラは大して高くないよ。

情報誌って、業界ではギャラが安い仕事の筆頭だと言われているような気がします。
(もちろん、クラウドソーシングサイトとは比べ物にならないくらい高いギャラですが)

あかね
私は情報誌ではギャラの高い特殊な企画を中心に担当しているのと、企画まるごとでの発注が多いんですよね。だから、会社が成り立っておるのです。あざます!

というギャラ事情に加えて、
紙媒体はこの先爆発的に仕事が増えることもなさそうです。

それにしても、覚えること、慣れることが多い。とにかく多い!
本業にしないのなら、時間と労力のパフォーマンスが、かなり悪いと思います。

もう一度言います。まじで、悪いことは言いません。Webがいいと思います!

それでも情報誌に関わりたいという未経験の方は、編集プロダクションで働くか、出版社でバイトするか、
1年くらい経験してからフリーランスをはじめてみてください!

あかね
その暁には、働き方改革なんていうぬるいことを言ってないで、一度は自分の限界を超えるくらいまで働いてみてください。なんやかんや、今活躍している人たちは「苦労伝説」を持っている気がします。
あかね
私のいつもお願いしているライターさんは、1冊関わっただけでサクッといろいろ吸収してくれましたが、
彼女はビジネスセンスもあるし頭もいいし、稀だろうなあ・・・。そこに照準をあわせて「誰でもできる」というのは早計だと思っています。

あとは、手始めに宣伝会議などの講座に通ってみるのもいいかもしれないです。
考え方を学ぶところであって、実務を学ぶところではないですけど、考え方を知っておくと役に立ちそうです。

ということで、ネガティブなことばかり綴ってしまいましたが、
現実はこんな感じ!!

この記事を書いた人

えむた あかね

名古屋でライターと編集者をしながら、新しい働き方や暮らし方を探し求めるアラフォーです。
趣味は旅、酒、サウナ。
こちらのブログは、ただの個人の感想やマニアックでリアルな情報を中心にゆるく書いています。
仕事には一切関係ないので、あえてまったく磨いていない状態で出す文章をどうぞ。